親が教えてくれたもの

母の体調が芳しくありません。人や家族の為にひたすら真面目に生きてきた母。もっと元気でもっと楽しい老後を送る資格があるのに! と、子として胸が痛みます。

母のことを考えながらふと思い出されたのが、高校時代のこと。友人達は、「父親から~だけは読んでおけ、と言われた」「親から、~と教えられた」と色々親から受けた人生訓を語っていました。自分の親はそんな事何も言ってくれなかった、と当時は淋しさや損をした気分、遅れを取った感を覚えました。

上京して一人暮らしを始め、段々自分のことが客観的に見えてくると、自分はとても恵まれた環境で育ってきたことが分るようになりました。

私は、両親が喧嘩している姿を見たことがありません。父は私が高校生の時、突然他界しました。私が知る両親の姿は僅か10数年のものです。が、尊敬できる父、働き者で主婦としては何でもできる母の下、滅多に怒られることもなく、私は(自分で言うのもなんですが)すくすくと素直な人間に育ちました。

たった一度だけ、父が怒った忘れられないシーンがあります。私がまだ幼かった頃、夕食時、おかずは母お手製のコロッケでした。(当時はまだ惣菜などというものは売られていません。)一人2個のコロッケにキャベツの千切り、あと漬物等並んでいたと思います。母のお皿だけコロッケは一つでした。幼い私は素朴に、「どうしてお母さんのコロッケは一個なの?」と聞きました。その時の母の返答は覚えていません。突然父が箸を置き、立ち上がって「碁をうちに行ってくる」と言いました。母はハッとして立ち上がり、父の着替えを手伝いました。父が出て行った後、食事を中座するという初めてのシーンにビックリして、「お父さん、どうしたの?」と母に聞きました。「怒ったの。お母さんが~と言ったから」。すまなさそうに母が教えてくれました。

それが唯一の出来事です。父も母もグチ一つ言うこともなく忙しく働きながら、母は父を尊敬し、父は祖母の世話をする母の姿に本当に感謝しそれを表していました。

何も教訓らしいものは語ってもらわなかったけれど、安心していられる環境の中で育ててもらった、自分という人間の土台を作ってもらった、と感じるようになりました。

大事な大事なものを直接自分の中にもらっていたのです。

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